2006年07月02日

高校演劇Selection 2002下

高校演劇Selection〈2002 下〉

【ラノベ】高校演劇Selection 2002下
出版:晩成書房

収録:
ばななな夜 Bananaん Night /入江郁美
151.8 /安部雅浩
女や〜めた! /安部いさむ
私場所 ワタクシバショ /岡村寛子
ちゃぶ台の詩 /石原哲也



私が現役演劇部員だった頃のもの。
演劇の大会で優秀と認められた戯曲(台本)が収められています。
生徒が個人で書いたか演劇部合作か、顧問作かの違いはありますが、全て創作です。
「私場所」は府大会で観ました。ライオンキングw
今でも良かったと思えるぐらい素敵な舞台でした。


※お気に入り順に感想並べてます。



【私場所】

女11
ももえ、せいこ、まりな、ひでみ、なおこ、
ともよ、ちえみ、さちこ、よしみ、はるみ、読書女


父の都合で学校を辞めることになったももえと友人の話。
教室を舞台に、過去と現在が交錯して進む。
テンポの良い大阪弁の会話で笑いをとりつつ、最後はホロリと来る。
少女の等身大の悲痛な思いが力強く書かれている。

字のみの戯曲としては「七人の部長」などを書いた越智さんのほうが
安定していると思いますが、大谷高校さんのすごいところは
役者の演技力のレベルの高さ。とにかく個性的で面白く自由で、強烈。
例え自分がやるにしても他校の上演は観たくない。
当時のあのキャスティングだからこそ完成されていたと思う。

読書女をどう演出するか、役者として表現するかが肝。
台本の指定を活かしつつ小道具・動きなどでいくらでも笑いがとれる……
もとい、自由に表現できることの楽しさを教えてくれた作品でした。



【151.8】

男2・女4
修平、美鈴、祥子、明子、謙一、知子


母と共に引っ越す事になった祥子と、頼りない父の物語。
両親が別れてもおばあちゃんはおばあちゃんだと言う祥子、
ラブラブ新婚さんの謙一と明子、そしてかつて父が母に贈ったレコード。
この作品には様々な形の愛が溢れている。

タイトルの数字は祥子役の役者の身長。
家の柱に日付を記すシーンがあるが上演の日を中心に設定してよい、と
注釈がついているので公演の季節を考えず挑める。

近所でおいしいと評判の親子丼を食べる時、
離婚した旦那には他人丼を食べさせようとする妻がブラックすぎて笑える。
新婚夫婦がラブラブなキャラというのは最早定番なので
役者の組み合わせや演出によっては陳腐な出来になると思う。
掛け声が「ポンキッキ」しかも最後の「キ」が裏返るシーンは
文字だけ見ても吹き出してしまうシーンなので笑いがとれないと辛い。

演劇臭い独白や回想などもなく、観客は1つの家の日常を観ることになる。
それはどこにでもある風景であり、翌日からはないとても愛しいもの。
ほのぼのしている中のほろ苦さが胸を衝く。



【女や〜めた!】

女7
坂本恵美、東城由香里、日下あつ子、浅倉貴子、
薬師寺あずさ、吉川みゆき、入江梨紗


女子校のある生徒から「女をやめたい」という発言が飛び出し
生徒会長は共学化検討委員会を発足、反対派と賛成派に別れ
弱小演劇部をも巻き込み、ディベートを行うことになった。

漫画やアニメではよく生徒会、特に生徒会長は
変人にも近い個性的な人間として描かれることが多いですが、
東城さんは中立のまともな人間に見えて木の役に没頭してしまう
かわいらしさがあり、親近感が沸きます。
梨紗は顔はかわいい顔して意外と行動力のある性格……。
と、個性豊かな面々が揃っているように見えて、キャラはちょっと弱い。
役者がくわわるととまた変わるのかもだけど。
弱いと思った原因はスポットが安定していないこと、
誰に焦点を当て物語を進めるかが明確ではないからではないでしょうか。

難しい問題を扱っていますが、反対派と賛成派が熱く討論している姿を見ると
つい自分ならどちらに立ちどう意見を交わすか考えてしまい、
また要所要所に出てくる弱小演劇部の劇中劇での喩えも分かりやすく
最後までお話を楽しめました。
教科書的というか、性同一性障害とは何か、女子校の存在価値とは、
そういった内容を勉強する時に観そうな劇……という印象です。
文化祭や研究会で発表すると熱い議論を呼びそうな。
こういうのを勉強内容に取り組むと面白いのにね。

ラストの浅倉の告白は蛇足だと思います。
そういった伏線はどこにも指定されていなかった以上、
これは設定の「展開・進展」ではなく「補足」ではないでしょうか。
意外なオチをつけたかったのかもしれないけど……。



【ちゃぶ台の詩】

男4・女4
有子、幸太郎、母、タケシ、祖母、友里、大河原、世作


東京に出て歌手になりたいと願う有子と、それに反対する頑固な父親の話。
ダメだと否定してはちゃぶ台をひっくり返すような古風な父が
有子の担任からこっそりと有名な歌手の名前を聞き、メモするシーンはじんとくる。
しかも名前を聞き間違えたりしてかわいいなあオヤジ。

有子は歌手になることを家出を決意するほど意気込んでいたのに
いざ父親が死に祖母が老人ホームに行くとなるとあっさりとその決意を変える。
そういうことって、特にこれくらいの年齢にはよくあると思う。
なんとなく拘ってみるとか、なんとなく意地張ってみるとか。
どうにも引けなくなって自分でもこのままでいいのか分からないまま突っ走ったり。
これは高校生が演じるからこそ意味がある作品なのでは。

繋がらないと分かっている亡き父の携帯に電話するラストは
「手紙でしめくくる」定番を現代版にスライドさせたものに当たるのかな。
よくあると分かっていてもやっぱいいね。だからこその定番、でしょうか。



【ばななな夜】

男2・女12・他
少女A、B、C、D、E、おばさん1、2、3、老婆、嫁、
ストリートミュージシャン、詩人、OL、女、通行人


伸びない成績に悩む少女と、彼氏と何かあったらしい少女二人の物語。
夜の公園が舞台。様々な年齢・職の人が通過していく。
そこで自分の悩みを指摘されたり、爆弾にビクビクしたりする。

比喩的というか、曖昧にぼかして描いてるところが多いので、
劇中の真相は誰にも分かりません。
だからこそ演じる側はもちろん、客も自由に想像できるのですが。
演出や役者のメンツによってはクソみたいにつまらない芝居に
なりやすい作品でしょう。

登場人物が多いように感じました。
この登場メンバーのままでいくなら少女AB以外は何役かでやらなきゃかも。

ところで舞台写真の像は中に人が入っているのでしょうかw
それで股間をタッチしたりしちゃったりするのでしょうかひゃっほう公開プレイ!
……あ、中の人などいません、よね、はい。







最後に、トータルで感想。
最近はいい意味で勢いが強く、さらりと日常を描きつつ
そこに高校生ならではの悩みを取り入れているものが多く、
シンプルでありながら幅の広い作品ばかりで大人になった私でも楽しめます。
創作で賞をとりたい演劇部員さんはプロの芝居を観たり
ワークショップに参加するだけでなく、同年代の人がどんなものを書き、
作ったのか、もっと興味を持つべきだと思います。
天才は感性で優れた作品を生み出すけれど
凡人は努力なしに賞賛を得る術はありませんよ。
今後もどのような戯曲が出てくるのか、楽しみです。
そしてこれを読んでいると8月京都で行われる全国大会は
全公演観てみたくなってきました。(笑)


posted by おじょう at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 戯曲・演劇関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。