
【ラノベ】“文学少女”と死にたがりの道化
著:野村美月 出版:エンターブレイン
文芸部に舞い込んだラブレター代筆依頼。
物語を食べる妖怪・遠子先輩の命令で、元覆面美少女作家の心葉くんは
恋する女の子の甘く初々しいラブレターを書くことになった。
相手は弓道部3年の片岡愁二。しかし調べてみると彼は学校に在籍していなくて……。
※以下ネタバレ
淡い色使いが目をひく表紙イラスト。そして「文学少女」の文字。
絵かタイトルか、どちらかOR両方にツボを感じる人も多いと思います。
私もそんな一人で本屋で見かけた時迷わず手にとりました。
そして冒頭をパラパラ……。
「文学少女」とはただの読書家の女の子という意味ではなく、
なんと本を食べてしまう、心葉くん曰く「妖怪」だったのです。
また学園を舞台にした、日常的な笑いを誘うおっとりしたコメディなのかと思いきや
一般的にイメージするような文学少女像を軽く超えてしまった遠子先輩と、
社会現象を巻き起こすほどの小説を美少女として書いたことのある心葉くんによる
人間臭い「ミステリー」小説だったりもします。どないやねんっ
読んでる途中で気付いたけど作者さんは
「赤城山卓球場に歌声は響く」「うさ恋。」の人だったんですね!
どっちも未読ですがレビューなどを読みこの方はコメディ志向の
作品を書く作家さんなのだと思っておりました。
あとがきによると今までと方向性を変えようという話になって
シリアス路線を目指したそうです。
太宰治の「人間失格」を練りこみ、存在しない生徒や少女の悩み、
主人公の辛い過去と並行して語られるこの物語は確かに軽いものでは
ありませんが、遠子先輩のふにゃ〜っとした空気に癒されるので、
そんなに身構えて読む必要もない仕様となっております。
適度に重く、適度に抜けてる。そんな感じ。
イラストがまた素敵なんですよこれがっ。
どっかで見たことあると思えば「ぴよぴよキングダム」の絵師さんだったのですね!
こんな塗り方どうやったらできるんだ、と
頭の中でレイヤーとかツールのこと考えたけど…………無理無理無理。
まず発想からして私にはこういうグラデを重ねた塗りはできないわけで。
画集とか出たら欲しいなー。癒されるー。
肝心のお話のほうは当初思い浮かべていたイメージと違ったけど、これはこれで。
ミステリ要素は少なめ。でも過去に何があったのか、
なぜこの登場人物がそういった行動に出るのか考えるのは楽しい。
富士見ミステリ文庫系をイメージして下され。
太宰治始め一般文学にカテゴリーされる本好きの方で
ラノベに挑戦してみようという人も馴染みやすいかもね。
「人間失格」は軽い引用どころか本編に密接に関わってきますので。
逆に私のように「人間失格」を読んだことがない人は
この作品を読み終えた後、読みたくなること請け合いでしょう。
青空文庫に走れ!!!
とっても重要なことを書き忘れてました。
遠子先輩は推定Aカップ、ひんぬーですひんぬーひゃっほう☆